りょまち日記

下書き、というよりは書き損じの手紙

「詩」というバケモノみたいなイキモノ

 

 

全員、とは言わない。

 

全ての人間がそうとは言わないが、人生には一度「詩」が落っこちてくる瞬間がある。

 

それが散歩中なのか、シャワーを浴びているときなのか、恋人と初めて手を繋いだ瞬間か、人によって実にさまざまなのだが。

たしかにそれは「すっ」と、音もなく降り積もる雪の一粒のように、心に落っこちてきてはじわっと溶けてゆく。

 

君にもあったはずだ。

 

つまらない授業中に大好きな歌の一節をノートの端に書き記したことが。

あのとき、確かに私たちはその愛しい詩たちを手にし抱きしめ、その瞬間「この詩だけが私の理解者なのだ」と 大いに勘違いし、満足気にその数行を眺めていた。

 

だが、厳密に言うとそれは「拾った詩」であって、落っこちてきた詩ではない。

詩を拾うことなんて何度だって出来る。

一度捨ててしまった後だって、まだそこに落ちているのであれば拾える(多くはたいてい"サビ"ついていたり、"コケ"が生えてしまっていたりするが)。

それにくらべ落っこちてくる詩というのは、まるで頭の上にちいちゃな雲が突如出現し、そこからまっさら生まれたての雪がふわっと降り落ちてくるように、「自分だけの詩」が心の中にじんわり生まれくるのだ。

 

この瞬間、たいていの人間はその詩を確かに一度見つめ、なんとも言えぬ恥ずかしさを覚え、困惑し、身悶える。そして名残惜しいとは心の底で思いつつもその詩を捨て去ってしまう。それも、このときの捨て方と言ったら「拾った詩を捨てる」ときのようなそれではない。

誰にも見られないような人気のない夜の海、もしくは富士の樹海あたりでしょうか。ですから季節はやはり秋の終わりでしょうね。

そんな寂しくかなしい「詩のハカバ」へそっと、匂いの漏れぬようしっかりビンに詰め(しかしビリビリに破ることなど決してできない)、投げ捨ててしまうのだ。

 

別にそれが愚かなことだとは決して思わない。

むしろそんなものさっさと捨て去ってしまった方がいいかもしれないよ、と言ってしまいたい気持ちさえ今なら少し、ある。

 

ただ、わたしがここで伝えたいのはその「落っこちてきた詩をいつまでも捨てきれず抱きしめたまま生き続けてしまう人間」もたしかに存在するということだ。

 

"こちら側の人間"になってしまったのなら覚悟が必要だ。

詩は要するに「言葉」であり、言葉は「生きもの」であり、しかも自分勝手極まりない性格、キバ有り、鋭いツメ有り、寿命は飼い主と一分一秒も違わず、おまけにエサは"人生"ときたもんだ。

こんなバケモノみたいなイキモノを、一生飼い慣らしながら(飼い慣らすことなど到底できない)生きてゆかなければならない。

 

.

.

少しおおげさに書いてしまった気もするが、そのくらい「詩」というものはおそろしく、だからとてつもなく美しい、例えるならば、決してなつくことのない「頭の良いケモノ」のようなイキモノなんだな。

 

ただ、落っこちてきたものを捨てきれず抱きしめてみただけなのに何という仕打ちでしょう。でも、仕方ありません。どんなおそろしい獣も生まれたての頃はちいちゃく可愛いものです。

.

.

 

だからふと、

 

わたしは今こんな風におもう。

 

もう、心の底から愛してあげようと。

 

何の見返りも求めずただ、初めて抱きしめたあの瞬間のまま愛してあげたいと。

いつか食い殺されてしまう日が来るとしても、それならそれでいいや。勝手に拾い上げ、抱きしめたのは自分なのだ。

 

抱きしめたまま捨てきれない、こんな駄文をここまで読んでくれている愚かなそこの同志たちよ。

共にこのどうしようもないバケモノを愛し生きていこうじゃないか。傷だらけの腕で筆を握り、丹念に擦り出した人生にその穂先を滲ませ、私たちだけの言葉を書きなぐっていこうじゃあないか。

 

 

なんて

 

いつもこんなふうに気障に締めようと、飼い慣らそうとする私はそのうち食い殺されることでしょう。本望です。

強がりでは、決してない。

 

 

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